宇都宮線の概要

宇都宮線とは

宇都宮線全線図宇都宮線とは、東京〜青森(盛岡〜八戸を除く)を結ぶ東北本線のうち、直流区間である上野〜黒磯につけられた愛称です(左図のオレンジ色の部分)。全長は159.7Kmで、東京都を出ると、埼玉県の東側を通り茨城県の西の先端を通過して、栃木県の中心をその北部まで南北方向にほぼ一直線に結んでいます。

東北本線の一部としての歴史は古く、上野から黒磯の区間は1886年までに開業しています。東北本線が東日本をまっすぐ南北に貫いているため、線路を共有する高崎線は東北本線の枝線として建設されたような印象を受ける場合があるかもしれませんが、実態は逆で、高崎線の上野〜熊谷間の開業が先になっています。左図でも上野から大宮に向かう直線をまっすぐたどれば、熊谷に到達します。宇都宮線は大宮を境にして「く」の字型になっており、高崎線の大宮を分岐点として後から建設されたことが表れています。

かつては東京と東北の主要都市とを結ぶ列車が多数運行されていましたが、東北新幹線以後は長距離輸送を新幹線に譲り、現在では通勤通学路線としての性格が強くなっています。埼玉県東部から茨城県西部、栃木県南部にかけては、途中駅で他路線への乗り換え含めて東京へ向かう流れが大部分を占めています。平日は通勤・通学客で、土休日も平日ほどではないですが買い物客などで、朝は上り方面、夕方から夜にかけては下り方面への列車に需要が集中し、宇都宮線の乗客の大きな流れとなっています。これに、各駅からの浦和、大宮、東武線乗り換えの久喜、小山、宇都宮などへの都市間輸送を加えたものが宇都宮線の利用の大部分を占めていると言うことができます。

運転系統は宇都宮で分断され、上野〜黒磯を結ぶ列車は1日数本のみとなり、上野〜宇都宮(途中の小金井止まりあり)と宇都宮〜黒磯間が主要な運転区間になっています。なお、黒磯からさらに北側に直通する普通電車は1本もありません。2001年のダイヤ改正で「湘南新宿ライン」が新設され、大宮から貨物線に入り、新宿を経由して横須賀線へ乗り入れる列車も運転されています。詳しくは次の項を参照して下さい。

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大宮以南の運転系統(湘南新宿ライン)

宇都宮線大宮以南の図宇都宮線は上野発着の普通列車が中心となっていますが、「湘南新宿ライン」の愛称で、1時間あたり普通と快速がそれぞれ1本ずつ池袋・新宿・渋谷を経由して横須賀線の大船・逗子へと直通運転されています。高崎線も同様に1時間に2本が新宿を経由し、東海道線の平塚や小田原へと直通しており、大宮〜新宿〜横浜〜大船のルートでは15分ヘッドで列車が運行されていることになります。この区間の停車駅は時刻表や下記関連リンク掲載のページ等でご確認下さい。

宇都宮方面からの湘南新宿ラインは大宮を過ぎると上野方面とは別線(貨物線)へと入り、ホームのないさいたま新都心・浦和を通過し、赤羽へと走り抜けます。そこからしばらく上野へ向かう線路と併走した後、山手線の線路をくぐり、今度は山手線と併走します。方面別ホームに改良された池袋から先は埼京線と同じ線路を走り、新宿へと到達します。新宿を発車すると渋谷・恵比寿を抜け、大崎でお台場・新木場方面のりんかい線に直通する埼京線に別れを告げ、短絡線を通り品川を出た横須賀線と合流、西大井から先では横須賀線の線路を走り大船・逗子へと到達します。

湘南新宿ラインの利用客は大宮以北から山手線の西側の副都心へと向かう乗客が多くを占めています。都庁の新宿移転に象徴されるように、平成以降、都市機能は山手線の西側へとシフトしていったため、それにつれ交通需要も池袋・新宿・渋谷を指向するようになっていきました。それに合わせ、宇都宮線の列車も1988年より一部が現在の湘南新宿ラインと同じルートで池袋・新宿へと振り向けられるようになりました。これを利用者の利便性向上と、多くの列車が錯綜する都心駅での折り返しを省くため、発展解消させ横須賀線へと延長させたのが湘南新宿ラインだからです。さらに最近では運転頻度が高まったことなどから、大宮以南で埼京線を補完する役割をも果たしています。大宮〜新宿間では湘南新宿ラインと埼京線の所要時間はほぼ一緒なので、大宮駅・新宿駅にはそれぞれ湘南新宿ラインおよび埼京線でどの列車が最初に新宿駅・大宮駅に先着するのかが表示されるようになっています。また、赤羽から新宿方面に向かう流動でも、湘南新宿ライン開通後もしばらくは埼京線の利用が圧倒的でしたが、湘南新宿ラインが15分ヘッド化された最近では、朝ラッシュ時を中心に乗客の移転が見られます。猛烈に混雑する埼京線を避け、少しでも空いている湘南新宿ラインに乗りたいというのが主な理由だと思われます。

以上のように、宇都宮から逗子までのロングラン運転となっている湘南新宿ラインですが、大宮以北から横浜以南へと乗り通す乗客はそれほど多くなく、かなりの乗客が池袋・渋谷・新宿の3駅で入れ替わります。ただし、その例外として平日のラッシュが終わりかけ頃や休日の朝などの車内では、横浜や鎌倉へ行こうという中年女性のグループや家族連れをちらほらと見かけます。大宮以北から乗り通す乗客については、当然に湘南新宿ラインの開通によって新たに生み出された旅客流動と言えますし、ターミナルである池袋・新宿・渋谷まで私鉄沿線からやって来て湘南新宿ラインに乗り換えるような場合でも、横須賀・東海道線側には通勤ライナーなど特別な列車を除いて、湘南新宿ライン開通前までは新宿方面への直通列車はなかったので、これも湘南新宿ラインがもたらした新たな流れと言えるのではないでしょうか。

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東京駅直通がもたらす効果について

東京の最混雑区間である京浜東北線・山手線の混雑緩和と利便性の向上を目的として、上野〜東京間の連絡線を復活させ、2009年度から宇都宮線・高崎線の列車を東京駅を経由して東海道線と相互直通運転させるプロジェクトが現在進行中です。このプロジェクトがもたらす効果には以下のようなメリットがあります。

京浜東北線・山手線の混雑緩和
東京以南へと向かう乗客が連絡線利用に移転することが予想されるため、JRの最混雑区間である上野〜御徒町間をはじめとして、上野〜東京間で混雑緩和が期待されます。このプロジェクトの場合、新に複線を敷設しそこに幅広タイプかつ15両編成の列車が行き交うことになるので、大幅な輸送力増強が期待できます。これについては、単に直通運転の中心となる宇都宮線・高崎線以外の列車の利用者だけでなく、それまで京浜東北線・山手線のこの区間を利用していた乗客全員が、その恩恵を受けることができるため、直通運転での最大のメリットと言うことができるでしょう。
乗り換えの手間が省ける
現在、湘南新宿ライン方面以外の列車は全てが上野止まりですが、このプロジェクトの完成により、東京や品川へと乗り換えなしで到達できるようになります。特に東京駅は東海道新幹線をはじめ、在来線各路線との接続点となる駅のため、そこまで乗り換えなしで到達できることは利用者の利便性向上という意味では大きな意味を持ちます。それ以外にも新たに、湘南新宿ラインの経由しない横浜以北の、新橋、品川、川崎の各駅へと乗り換えなしで行くことができるようになります。また、乗り換えの時間を省くことができるので、多少の時間節約にもつながります。
車両運用の効率化と車両基地のスリム化
乗客には直接関係ないことですが、宇都宮線・高崎線と東海道線は同じ車両を使っているために、上野および東京をスルー運転をすることにより、両駅での折り返しにかかる時間を省くことができるため、車両運用を効率化させることができるという利点もあります。また、田町電車区に所属する電車を、客車列車の減少に伴い収容列車が減少している尾久客車区に移動させることで、田町電車区をスリム化させ、空いたスペースを活用することができます。既に、同地区に商業施設を展開させ、さらに山手線の新駅を設置する計画が公式に発表されています。
上野駅のホームがわかりやすくなる(?)
上野駅の地上ホーム(13番線〜17番線)は行き止まりになっているため、東京方面へとスルー運転するためには列車を地上ホーム(5番線〜8番線)に発着するさせる必要があります。その際、平面交差を避けようとすれば、必然的に5番線・6番線は宇都宮線・高崎線北行き、7番線・8番線は宇都宮線・高崎線南行きとなってきます。これまで、宇都宮線・高崎線は発車ホームが5番線〜8番線および13番線〜15番線とバラバラで、列車が発車してしまった、あるいは座れなかったといったようなときには、次発の列車を求めてホーム間の移動を強いられていましたが、方面別に1つの島式ホームに統一されれば、そのような事態をなくすことができます。スルー運転開始後も始発列車が地上ホーム発着として残ることが予想されますが、現在よりは格段にホーム間移動が少なくなることは間違いありません。ただし、これに関してはあくまで予想の域を出ないのでクエスチョンマーク付きとさせていただきました。

これ以外に、関連リンクに挙げた「東京通過思想」には直通運転の利点として、「上野・東京駅から乗り換え客が分散することで、駅の混雑緩和につながる」、「ダイヤのパターン化が実現される」という興味深い記事が掲載されています。詳しくは参考リンクのリンク先をご覧下さい。ところで、このプロジェクトには以下に掲げるようなデメリットも存在します。

始発列車の減少により座席確保が困難になる
夕ラッシュ時の上野駅では、発車時刻の20分前くらいから普通車の乗車位置札の下に列ができはじめます。始発駅ならではの光景であると同時に、そこから座席確保に対する需要の強さを見て取ることができます。スルー運転が開始されると、北行きの電車でも上野に到着した時点で、既にある程度の人が乗っている状態となるため、これまでの並べば確実に座れるという状況が不確定なものになります。
京浜東北線の快速線として利用される
このプロジェクトは、上野〜東京駅間の利用のみに効果をもたらすだけではありません。この区間がつながることにより、その前後を含めた区間において、これまでにない利用方法ができるようになるからです。例えば、いま品川から川口まで利用しようとした場合、東海道線・京浜東北線・東北線・京浜東北線という経路が取られることはまずなく、京浜東北線一本で行くのが普通でした。なぜなら、停車駅数が多くなっても、乗り換えの手間やそれにかかる時間を考えると、京浜東北線一本で済ました方が便利だからです。しかし、宇都宮線・高崎線が東海道線とスルー運転すると、状況は一変します。品川から赤羽まで宇都宮線直通列車に乗車し、赤羽から京浜東北線に乗り換えるのが一般的となるでしょう。つまり、その分だけ京浜東北線から宇都宮線に乗客が移転することになります。このような例は、南浦和〜上野と東京〜東神奈川間相互発着となる場合のほとんど全ての場合に当てはまります。この区間は駅の乗降客数も多いため、相当数の移転が起こることになり、宇都宮線利用者の立場から言えば、列車の混雑化という点でデメリットとなります。もちろん、総体として多数を占めるこれらの区間の利用者にとっては大幅な利便性向上になるため、これを理由にスルー運転に反対することに対しては躊躇せざるを得ませんが、「東京経由で東海道線に直通しさえすれば全てよし」というような安易な考え方はできないことになります。

最後の例に示したように、「中距離列車は都心部において通勤列車の快速線となる」ということが、京阪神だけでなく、いよいよ首都圏でも現実のものになりつつあります。これからの中距離電車には、通勤列車としても使えるキャパシティーが必要とされているのです。近年、E231系によって近郊型と通勤型の区分が曖昧になったと言われていますが、東京駅直通を考えると、それは自然な流れだったのではないでしょうか。座席数の減少についても、利便性とバーターとして、ある程度受け入れざるを得ない部分があります。ただし、このまま東海道線との直通運転を開始して問題がないかというとそうではありません。今後、乗客が移転してくれば、列車の混雑化は必至の状況となってきます。これを緩和するために、車両性能の向上に伴った列車の高速化と車両運用の効率化による運転の多頻度化が求められます。

直通線の台座となる構造部
神田駅付近では新たに新幹線の上に直通線を建設することになる。それを見越して、新幹線建設時に台座となる部分が準備されている。

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